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特集 November.29, 2017
 
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改正《反不正当競争法》における知的財産関連条項の評論分析

 1993年12月1日に中国で初の《反不正当競争法(不正競争防止法)》の正式な施行から24年後の2017年11月4日、中国全国人民代表大会常務委員会において改正《反不正当競争法》が可決された。改正後の反不正当競争法は、2018年1月1日から施行される。

 長年にわたり、中国の社会各界は《反不正当競争法》の改正に高い関心を払ってきたが、千呼万喚を経て、今般ようやく実際の姿が見えてきた。《専利法》、《商標法》、《著作権法》という三大知的財産関連の部門法(部門法:中国の法体系における7つの法律部類の中に属する法律――訳注))の改正が比較的頻繁に行われるのに対し、1993年に正式に公布、施行された《反不正当競争法》は、この24年間、全く動きがなかったが、この間の中国社会?経済の情勢には、極めて大きな変化が生じ、市場を資源配分の核心とする考え方が人々に浸透した。一部の経済先進国は今なお、あれこれと客観的な理由を挙げて中国市場経済の地位を認めないが、だからといって中国が市場経済国家ではないということにはならず、市場経済の根本法則とは即ち競争であり、資源配分は需要供給を巡って競争の形態で展開される。

 しかしながら、競争には秩序が必要であり、公序良俗と信義誠実の原則を順守しなければならず、これにより競争法は市場経済における《憲法》であり、競争法の二本柱、即ち《反不正当競争法》と《反独占法》は市場経済の健全かつ秩序ある発展をけん引する2台の馬車となっている。1993年《反不正当競争法》は「不正競争」のほか、「独占」も規制の対象としており、2008年の《反独占法(独占禁止法)》が正式に施行された後、《反不正当競争法》における独占防止の機能は事実上、《反独占法》に譲られたかたちとなったため、今回の改正《反不正当競争法》では、立法者が必要に即して、改正前の《反不正当競争法》における独占防止機能をすべて削除し、これで《反不正当競争法》は名実ともに一致するものとなった。

 さらに、今回の改正《反不正当競争法》では過去十数年間の反不正当競争分野での法律適用の実りある成果を反映してこれを法律化しており、特に知的財産権に係る条項は、改正後、体裁がより明晰で、構成もよりいっそう合理的となり、文言もより緻密で、不備欠陥が可能な限り解消されており、これらがいずれも今回の改正の特色を浮き彫りにしているところである。今回の《反不正当競争法》における知的財産権に係る条項の内容について以下に逐一評論?分析していく。

 一.《反不正当競争法》第2条第2項「信義誠実」の原則

 改正《反不正当競争法》第2条第2項では、「この法律において、不正競争行為とは、経営者が生産経営活動において、本法の規定に違反し、市場の競争秩序を乱し、その他経営者又は消費者の合法的な権益を損なう行為をいう。」と規定されている。

 1993年《反不正当競争法》第2条第2項では、「この法律において、不正競争とは、経営者が本法規定に違反し、その他経営者の合法的な権益を損ない、社会経済秩序を乱す行為をいう。」と規定されている。

 1.1993年《反不正当競争法》第2条第2項は、総則部分にあり、原則的条項であるが、事実上この10年来、同条は具体的な事件において適用される頻度と争点となる程度で際だってきており、これはおそらく当初の立法者の想定をも遥かに超えているであろう。とりわけインターネット分野の不正当競争に係る紛争事件では、大多数が当該条項を引用して解決されている。例えば著名な「3Q大戦事件」(Tencentが奇虎360のセキュリティツール「扣扣保鑣」を不正競争で訴えた事件)、Baiduが奇虎360の検索タグ挿入を訴えた事件、Sogou(搜狗)が奇虎360ブラウザのデフォルト設定を訴えた事件、BaiduがSogouの入力法を訴えた事件などはいずれもそうである。

 1993年《反不正当競争法》が制定、施行された当時、中国ではまだインターネットが登場していなかったため、当時の立法者もこのような条項の設置による規制は全く想定していなかったが、この10年の中国におけるインターネットの勃興に伴い、これに関連する紛争がとどまることなく発生し、また、インターネットに係る競争行為は《専利法》、《商標法》、《著作権法》などの部門法に違反しないことから、これらの部門法を適用する余地もなく、こういった背景下で《反不正当競争法》はインターネット分野の競争行為を規制するための唯一無二の手段となったが、《反不正当競争法》の各則部分の諸条項に目を通すと、インターネットに関連する条項は1つもなく、そこで、《反不正当競争法》第2条第2項に定められた、いわゆる「信義誠実の原則」の総括的、抽象的な法律精神を選択、適用することによって、こういったミクロレベルでこのような具体的な紛争事件を処理せざるを得なかったわけである。この10年で法律の実務と模索が進むにつれ、《反不正当競争法》第2条第2項から「最小特権の原則」、「公益上の必要がない場合の不干渉の原則」などが次々に派生し、これらの原則はミクロレベルでの具体的事件の処理経験が総括されたものであり、その後の類似事件の処理に対して大きな指導的意義を有する。

 改正《反不正当競争法》第12条では、以上の法律の実務から得られた経験を整理、総括し、インターネット分野に関する典型的な不正競争の形態として次の4つの形態がつくり出された。(1)その他経営者の同意を経ずして、その適法に提供するネットワーク製品又はサービスにおいて、リンクを張り、リンク先に強制的にジャンプさせる、(2)ユーザーを誤った方向に導き、欺き、強迫して、その他経営者の適法に提供するネットワーク製品又はサービスを修正、停止、アンインストールさせる、(3)その他経営者が適法に提供するネットワーク製品又はサービスに対して悪意をもって互換性を持たせない、(4)その他経営者の適法に提供するネットワーク製品又はサービスの正常な運営を妨害、破壊するその他の行為、である。

 これにより、改正《反不正当競争法》が正式に施行された後、インターネットに係る不正競争事件には改正《反不正当競争法》第2条第2項を適用せずに、第12条を直接引用すればよくなる。

 2.《反不正当競争法》第2条第2項に「消費者権益の損害」という価値評価が取り入れられたが、これもこれまでの法律の実務において蓄積してきた経験の総括であり、1993年《反不正当競争法》における強調、評価の対象はいずれも経営者間で発生する競争行為で、上記行為の直接的な受益者または受損者は経営者であるが、その間接的な受益者または受損者は必ず当該経営活動に関連する消費者であるため、ある行為が正当であるか否かを評価する際に、その行為による消費者権益への影響を無視することは、明らかに客観性を欠くことになることからも、改正《反不正当競争法》では「消費者の合法的な権益が損なわれたか否か」が追加され、これを競争行為の正当性を評価する際の加味事項の1つとされたことは、全くもって正しい。

 二.《反不正当競争法》第6条、標章の保護

 1.《反不正当競争法》第6条は、かいつまんで言うと標章に対する保護であり、当然この標章とは商標との対比において、より上位かつ広範な概念である。改正《反不正当競争法》では、1993年《反不正当競争法》の第5条第(一)号が削除された。同条は「他人の登録商標を模倣すること」であるが、事実上「他人の登録商標の模倣」は《商標法》の管轄範疇にあるはずで、かつ商標権侵害形態の法定の原則に基づき、《商標法》、《商標法実施条例》および最高人民法院の《商標民事紛争事件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈》において、すでに登録商標権侵害の各種類型が明確に列挙されているため、1993年《反不正当競争法》第5条第(一)号の規定は何ら適用の余地が無くなったが、事実上、法律の実務において同条項を引用した裁定事例が過去にほとんどないため、今回の改正で同条項を削除したことは時宜に適っている。

 2.改正《反不正当競争法》第6条第(一)号は1993年《反不正当競争法》第5条第(二)号における「知名商品(周知商品に相当――訳注)の特有の名称、包装、装飾」が、「一定の影響を有する商品の名称、包装、装飾」に修正され、文言上の変化は大きくないとは言えないが、事実上その本質に変化はない。知名商品の特有の名称、包装、装飾と一定の影響を有する商品の名称、包装、装飾は、内実と外延において基本的に一致しており、ここで「知名商品」を「一定の影響を有する商品」に修正した理由は、「知名商品」には表彰という印象があり、主観的な良し悪しの色合いが濃すぎるため、「一定の影響を有する」という言い回しにより中立性と客観性を持たせるためである。また、「特有」の2字が削除されているが、これは今後の事件において原告が主張する商品の名称、包装、装飾の特有性を考慮しないという意味ではなく、ここでいう特有性とは、事実上登録商標の顕著性と同じ意図のものである。「知名商品の特有の名称、包装、装飾」をどのように認定するかについては、実際には、2007年の最高人民法院の《不正競争民事事件の審理における法律応用の若干問題に関する解釈》の第1条から第5条ですでに十分明確な規定がなされており、改正《反不正当競争法》が正式に施行された後、上述の司法解釈で確立された審査基準が引き続き適用される。

 3.改正《反不正当競争法》第6条第(一)号の最大の変化は、文言に「等」の字が追加されたことである。あらためて1993年《反不正当競争法》を見てみると、その第5条第(二)号は閉鎖式の規定で、名称、包装、装飾という3つ態様のみが列挙されており、「等」の字がないため、名称、包装、装飾のいずれにも該当しない商品態様が保護対象から排除するしかなかったが、事実上、商品態様に対する保護の重要性の程度は、名称、包装、装飾に劣るものではないので、今回の改正で「等」の字が加えられた。これにより、商品態様が保護範囲に組み込まれる可能性が出てきたほか、今後、保護を要するその他の形態が出てきた場合に、法曹実務の中で組み込むことが可能となり、このような間口の広い規定が設けられたことは、《反不正当競争法》の適用に大きな広がりをもたせることにつながり、これは、今後において法律の改正を経ずとも《反不正当競争法》を将来の新たな社会経済形態に対して同様に適応させていくことが可能となるということでもある。

 4.改正《反不正当競争法》第6条第(二)号は、企業名称の保護に関する条項で、企業名称の保護を略称、屋号などにまで細分化している。その中、略称の保護に関しては、典型事例として「広本」の事例がある。「広本」は「広州本田」の略称で、この「広本」のような企業名称の略称が保護の対象となるのかという点については、以前、確かに論争があり、一方で、1993年《反不正当競争法》に列挙された企業名称には略称が含まれておらず、恣意的に略称を保護範囲に組み込むと、《反不正当競争法》の保護範囲を不当に拡大することと同じだとする見方もあり、また他方では、《反不正当競争法》による企業名称の保護を機械的、教条的に理解、適用してはならず、企業名称の略称も不正競争の形態の1つであって、《反不正当競争法》の規制の範疇に組み込むべきであるとする見方もあった。今回の《反不正当競争法》の改正で後者の見方が取り入れられたことは明らかである。

 また、改正《反不正当競争法》第6条第(二)号では、企業名称の保護に関して「一定の影響を有する」という文言が追加されたが、これは実際に必要である。以前は1993年《反不正当競争法》を適用して紛争を処理する際に、被疑侵害者による《不正当競争》の構成を認定するにあたり、権利主張者はその企業名称がすでにその使用を通じて中華人民共和国の境界内において一定の影響力を有していることを裏付ける証拠を提示することが最善策とされていたが、今回の改正ではこの法曹実務が反映されている。また、《工業所有権の保護の関するパリ条約》第8条では、「商号は、商標の一部であるか否かを問わず、すべての加盟国において保護されるものとし、そのためには、登記の申請又は登記が行われていることを必要としない。」と規定されている。中国は《パリ条約》の加盟国として、当然外国企業名称に保護を与える義務を有するが、その保護は、やはり当該外国企業名称がすでに中華人民共和国の境界内において、使用により一定の影響を有していることが前提となる。

 5.改正《反不正当競争法》第6条第(二)号にある「社会組織名称(略称を含む)」、姓名(筆名、芸名、訳名を含む)などは、明らかに「商品化権」の範疇に属する。商品化権には、ここ数年、法曹実務において各界で頻繁に議論され、比較的大きな論争を引き起こしている。これまでの法曹実務における「商品化権」の保護に関する典型事例としては、2015年8月、北京市高級人民法院で結審した「功夫熊猫KUNGFUPANDA」事件がある。この事件で北京市高級人民法院は次のように判断した。「功夫熊猫KUNFUPANDA」はドリームワークス社の有名映画とその中のキャラクターの名称であることはすでに関連公衆の周知するところであり、高い知名度を有する。しかも、その知名度の獲得はドリームワークス社の創造的な労働の結実であり、そのもたらした商業価値および商業機会もまたドリームワークス社が大量の労働力と多額の資本を投じて得たものである。したがって、「KUNGFUPANDA」は先行する著名映画の名称およびその中のキャラクター名称として先行する「商品化権」により保護されるべきである。多くの人々が「功夫熊猫」(カンフーパンダ)のような有名映画の名称は保護されてしかるべきであると考えるが、しかしその保護の根拠は何か、そしてどのように保護するのかという点は大きな争点を引き起こした。今回の改正《反不正当競争法》第6条第(二)号ではこれに対して明確に規定されており、今後、商品化権の保護に同条項を直接適用できることは明白であり、これは文化創造に大きく依存する産業経営者にとって、非常に大きな福音となるであろう。

 6.改正《反不正当競争法》第6条第(三)号における「ドメインの主体部分」に対する保護は、実際には、2001年の最高人民法院の「コンピュータネットワークのドメインに係る民事紛争事件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈」において、ドメインをどのように保護するかについてすでに明確な規定が行われている。なお、ここ数年、インターネット情報検索および情報通信の変化に伴い、ドメイン類、ウェブサイト名称、ウェブページ類の不正競争紛争事件の件数は全体的にやや減少している。

 7.改正《反不正当競争法》第6条第(四)号は、明らかにキャッチオール条項であり、第6条第(一)号から第(三)号の適用はできないが、誤認を引き起こし得る混同行為について、同条項で処理することができる。

 まとめると、改正《反不正当競争法》第6条は、これまでの不正競争類の事件の裁判と法執行の経験を適切に整理、総括した上で、これを法律に昇華させたものであり、今後の統一した司法と法執行に向けて良好な基礎を築いた。

 三.《反不正当競争法》第8条、虚偽宣伝

 改正《反不正当競争法》第8条に対応するのは1993年《反不正当競争法》第9条で、「虚偽宣伝」条項と称することができるが、今回の改正で条文の文言がよりいっそう緻密になった。1993年《反不正当競争法》では、「人の誤解をまねく虚偽宣伝を禁止する」と規定されていたが、ならば「人の誤解をまねかない虚偽宣伝」は規制すべきなのか。結論は当然、規制すべきなのだが、当時の法律の規定では、上記の特定文言に囚われ、法律適用の際に複数の解釈が生じてしまっていたため、今回の改正でこれを「虚假或引人誤解的商業宣伝」に改正し、文字通り、「虚偽の商業宣伝」を禁止すべきで、「人の誤解をまねく商業宣伝」も禁止すべきであるとされた。なお、人の誤解をまねく商業宣伝とは、必ずしも「虚偽」でなければならないということはなく、真実の商業宣伝であっても、「人の誤解をまねく」に足るものは同様に禁止すべきであるとされた点に注意が必要である。

 四.《反不正当競争法》第9条、営業秘密の保護

 改正《反不正当競争法》第9条は「営業秘密」の保護に関する条項で、対応するのは1993年《反不正当競争法》第10条である。営業秘密の中のノウハウは《反不正当競争法》全体において唯一《専利法》と直接的な関連性を有する条項である。営業秘密の保護に関しては今回の改正で特別な点はない。また、営業秘密をどのように保護するかについては、実際には、2007年の最高人民法院の《不正競争民事事件の審理における法律応用の若干問題に関する解釈》の第9条から第17条ですでに十分詳細な規定が行われている。

 しなしながら、規定が詳細であるということが、営業秘密事件の解决をより容易にするということにはならず、実際には、営業秘密の保護は不正競争防止に係る紛争類の事件の中でも保護が最も難しく、権利保護の成功率が最も小さい部類である可能性もあり、その最も主たる原因は、法律の規定が大まかであるか、あるいは細かいかといった問題ではなく、権利確定におけるさまざまな不確実性の存在と、被疑侵害形態に係る証拠入手の難しさにある。一般的に言って、上記の2点を順調にクリアできさえすれば、侵害行為の照合検証については一定の段取りで進めることが可能である。法曹実務において、営業秘密の保護には次の2つの難点がある。

 1.営業秘密ではない情報を保護範囲に組み入れることで、権利確定の境界線が曖昧になる。《専利法》や《商標法》などの部門法とは違い、権利付与および権利確定の手続きを経て形成された私権は、その境界線が明確で、権利者はその保護範囲の大きさを知っており、不特定の社会公衆から見ても、その権利の境界がどこにあるかが分かり、合理的に権利の衝突を避けることができる。しかしながら、営業秘密が人に示すことができないという特性を持っているため、権利者は自己の権利の保護範囲がどれほどの大きさなのかが分からず、事件よっては、本来は公知領域に属する情報を権利者が保護範囲に入れてしまい、その営業秘密の保護範囲を不適切に拡大してしまう場合があり、また他方では、保護範囲の境界が不明確であるがゆえに、不特定の社会公衆もこれをどのように回避したらよいのかはっきりと把握できないといった状況が生じる。したがって、実際に紛争となって訴訟当事者双方が争うようになった段階で、ようやく営業秘密の保護の内容が一体どういうものなのかを理解するということが往々にして起こる。これは非常に困った問題ではあるが、これはまさに営業秘密そのものの特性に由来する問題なのである。唯一の方策は、情報が生じる都度に、公知領域の情報を削除した上で、速やかに当該情報を固定し、体系化して、これを物理的媒体に記録し、専利出願書類中の専利請求の範囲、明細書、図面などを照合して、図面と文章記載に不備のない内部文書を作成し、かつこれを機密取扱で管理し、内部の機密管理体制を確立することで、営業秘密の保護内容と境界を確定することである。

 2.被疑侵害行為の証拠をどのように取得するのか、営業秘密においてはこれも人を困らせて止まない問題である。中国の《民事訴訟法》で確立された、主張者が立証責任を負うとした原則に基づき、訴訟提起した一方当事者は被疑侵害行為の成立を証明する立証責任を当然にして負う。しかしながら、一部の製造方法や、生産工程などに係る事実は、証拠収集が非常に困難で(方法特許にもこの類いの問題は当然ある)、このような場合には、訴訟前に十分に調査を行った上で、中国《民事訴訟法》の証拠保全制度を臨機応変に運用し、立証責任の合理的分配の原理を利用することで上記の困難を克服するほかない。

 以上をまとめると、営業秘密の保護が直面する困難は、法律の規定そのものの問題ではなく、現行規定をいかに効果的に行使するかという問題である。当然、営業秘密をより良く保護するという観点からは、営業秘密を特に対象として立法を進め、1つの独立した部門法とすることができるならば、営業秘密の保護にとって大変有益であろう。