今年の8月1日より、経営者は「知的財産権を保護する」という名目で競合他社を排除または制限する行為を行ってはならない。調べによって一旦事実と確認された場合、違法所得が没収されるとともに、最高で前年度売上高の10%の過料に処され、合意に至った独占契約をまだ実施していない場合であっても、50万人民元以下の過料に処される。
国家工商行政管理総局の情報では、去年の6月より意見募集が行われていた「関於禁止濫用知識産権排除、限制競争行為的規定(知的財産権を濫用した競争の排除・制限行為の禁止に関する規定)」(以下「規定」)は、当局の局務会議にて可決後、正式に公布され、2015年8月1日より施行される。
特許権濫用は反壟断法執行の重点となるか
「規定」において、本規定でいう知的財産権を濫用して競争を排除、制限する行為とは、経営者が反壟断法(以下「独占禁止法」)の規定に違反して知的財産権を行使し、独占契約、市場を支配する地位の濫用などの独占行為を実施することを指す(価格独占行為は除く)ことが明確にされている。
知的財産分野の独占禁止は、独占禁止法の執行の重要な内容である。近年、知的財産権を濫用した競争の排除、制限の問題に独占禁止法の執行機関の注目が高まってきている。
メディアの報道によれば、中国の独占禁止法執行機関は自動車、白酒などの業界において数度にわたる大規模な法執行の後、次の段階では知的財産権に関連する分野に注目していくことを決定した。これに対し、国家発展改革委員会の関連責任者は先日、知的財産権の濫用行為に対する独占禁止の規制は、国や時期により異なった選択が行われており、中国は目下、知的財産の保護に注力するとともに、知的財産権の濫用に対する独占禁止法の執行を強化する必要があることを示した。
調べによると、医薬品、自動車アフターマーケット、農業機械などの産業は知的財産分野において独占行為が頻発する被害の大きい分野であり、今後、これらの業界に対しさらに強力な独占禁止法の執行が実施される傾向にある。
実際に、特許権の濫用については、先日、特許医薬品の定価に関する問題が法執行機関に報告され、関連部門によりそれについて検討が行われていることが報道されている。
パテントプールを利用した支配的地位の濫用禁止
国家工商総局が今回公布する「規定」は、中国の独占禁止法の枠内にあり、工商機関の独占禁止機能に立脚し、価格以外の知的財産権を濫用して競争を排除、制限する行為について規定されている。
「規定」では、知的財産権濫用の問題に関わる市場支配的地位の認定および推定規則について明確に定められ、知的財産の許諾の拒絶、取引の限定、抱き合わせ販売、非合理的な制限条件の付加、差別的な取扱いなどの実務においてよく見られるいくつかの具体的な濫用行為に対して禁止規定が設けられている。
「規定」では、パテントプール、基準において知的財産権の行使が独占行為となり得る具体的な状況についても規定されている。そのうち、パテントプールについて「規定」では、パテントプールの構成員はパテントプールを利用して生産高、市場分割などの競争にかかわる敏感な情報を交換し、独占禁止法第13条、第14条で禁止されている独占契約をしてはならないことが明確にされている。
「規定」では、市場の支配的地位を有するパテントプール管理組織は、正当な理由なくパテントプールを利用して次に掲げる市場の支配的地位を濫用する行為を実施し、競争を排除、制限してはならないことが指摘されている。
(1)パテントプールの構成員がパテントプール以外で単独の許諾者として特許の使用を許諾することを制限する。(2)パテントプールの構成員または被許諾者が単独でまたは第三者と共同でプールの特許と競合する技術を研究開発することを制限する。(3)改善または研究開発した技術を独占的にパテントプール管理組織または構成員にグラントバックすることを被許諾者に強要する。(4)被許諾者がプール特許の有效性に疑問を呈することを禁止する。(5)同じ条件を持つパテントプールの構成員または同一の関連市場の被許諾者に対して取引条件上の差別的待遇を行う。(6)国家工商行政管理総局が認定したその他市場支配的地位を濫用する行為。
「規定」では「パテントプール」の概念について明確に定められており、2または2以上の特許権者が、ある形式によりそれぞれが所有する特許を第三者に共同で許諾する契約上の手配をいう。その形式としては、これを目的として設立された専門合弁企業でもよく、またあるパテントプールの構成員またはある独立した第三者に依頼して管理を行ってもよい。
最高前年度売上高の10%の過料
「規定」では同時に罰則についても明確に定められている。「規定」に基づき、経営者の知的財産権を濫用した競争の排除、制限の行為が独占契約に該当する場合は、工商行政管理機関より違法行為の停止を命じ、違法所得を没収するとともに、また前年度売上高の1%以上10%以下の過料に処し、合意に至った独占契約が未実施の場合は、50万元以下の過料に処することができる。
経営者の知的財産権を濫用した競争の排除、制限の行為が市場の支配的地位の濫用に該当する場合は、工商行政管理機関が違法行為の停止を命じ、違法所得を没収するとともに、前年度売上高の1%以上10%以下の過料に処する。
工商総局の関連責任者は、独占禁止と知的財産保護には、競争とイノベーションを促進し、経済運営の効率を向上させ、消費者利益および社会公共利益を保護するという共通の目標があると述べている。(出所:法制日報)
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