台湾微星科技股份有限公司(以下、「微星公司」という)は1986年に設立され、業界の有名なメインボ—ドとグラフィックカードのメーカーである。2012年に新しいゲームグラフィックカードを設計したが、この新商品のため商標「GAMING G SERIES」を考案した。微星公司は中国商標局に当該商標を出願したところ、商標局、商標評審委員会は「GAMING」が賭博に翻訳でき、指定商品において不良な社会影響が生じ易いため、商標として使用できないという理由で、該商標の登録出願を拒絶した。
しかし、中国大陸で他の会社が出願した「GAMING」を含む商標は登録された前例もあり、「GAMING G SERIES」商標も多くの国と地域で登録された。微星公司は商標評審委員会の決定に不服し、裁判所に行政訴訟を提起した。北京知的財産権裁判所は審理を経て、「GAMING」は不良な社会影響が生じないと判断し、拒絶査定不服審判決定書を取り消した。
裁判所の判断は以下のとおりである。「GAMING」を賭博と訳すことができるが、賭博が通常の意味でなく、公衆に幅広く知られていない。漢英辞書で「賭博」と対応する英単語が「GAMBLING」である。本件において、当該商標の使用商品がゲームグラフィックカードで、即ち商標が使用されるのはコンピューター分野である。微星公司が調査会社に依頼し、北京、上海、天津、広州、深圳でアンケート調査を行った。調査レポートによると、「GAMING」の意味に対する公衆の理解はほとんどケームと競技に集中し、賭博ではない。
したがって、裁判所は微星公司の意見を認め、「GAMING」を含む商標が不良影響を生じないと認定した。
「商標法」第十条第一項第(八)号にいう不良影響は、商標がわが国の政治、経済、文化、宗教、民族などの社会公共利益と公共秩序に消極的でマイナスの影響をもたらすことを指す。それでは、不良影響の判断基準は「社会公衆の普遍認知」に基づくのか、それとも「商標自体の客観的意味」に基づくのか問題となる。
本件では、商標局、商標評審委員会は「GAMBLING」が「賭博」の意味を持つことを基準とした。即ち、商標局、商標評審委員会のような行政機関は商標の不良影響を審査する際に、「社会公衆の普遍認知」でなく、商標自身の観念を判断標準にする傾向がある。ところが、裁判所は商標評審委員会の決定を覆し、「社会公衆普遍認知」を判断基準にした。
商標は、社会経済生活において普通消費者に向かって使用される商業標章である。不良影響が発生するかどうかを判断するときは、商業活動における実際の使用状態が社会公衆に不良影響を招くかどうかを全面的に考察すべきである。不良影響の対象が社会公衆であり、社会公衆の普遍認知を考量の要素にせず、ただ書面の意味により認定するのは、機械的で、事実に基づいて真実を求める原則に合致せず、知的財産権が経済発展に対する効用の発揮に不利である。したがって、商標局、商標評審委員会が客観的な意味によって機械的に不良影響を認定し、拒絶査定したケースにおいて、出願人は積極的に司法救済を求めるべきである。 |