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No.136 July.28, 2017
 
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頤和園
 
目 録
ニュース
《専利優先審査管理弁法》が8月1日より施行
国家知識産権局 最新の公表資料:2017年上半期専利業務の統計データ
商務部:知的財産権関連の輸出額は149億4,000万元で、前年同期比458.4%の増加
国家知識産権局:19の特許審査ハイウェイ参加国・地域でPPH申請書を共通化
国家版権局など4部門が「剣網2017」行動を始動
欧州連合知的財産庁:営業秘密は特許よりも歓迎される
注目判決
集佳が代理した商標「善行者 One Step One Changeおよび図」の 拒絶査定不服審判
集佳が代理した「美麗俏佳人」著作権侵害紛争事件の一審判決
集佳が代理した商標「」の拒絶査定不服審判審決行政訴訟事件——商標使用許諾および権利確認に対する顕著性の影響
集佳の最新動向
「法に精通し、期待に応える」 ——「東方眼鏡」(滬上の中華老字号)法定代表者 李定法氏より表彰旗
愛のある企業へ向かおう、公益のチカラを伝えよう ——大連理工大学夏季社会実習班が集佳を再訪
 
 
ニュース

 
《専利優先審査管理弁法》が8月1日より施行

 

  専利優先審査管理弁法

  第1条 産業構造の最適化・高度化を促進し、国家知的財産戦略の実施と知的財産強国の建設を推進し、イノベーション主導型発展に寄与し、専利審査手続きを整備するため、《中華人民共和国専利法》及び《中華人民共和国専利法実施細則》(以下、「専利法実施細則」)の関連規定に基づき、この弁法を制定する。

  第2条 次に掲げる専利出願又は案件の優先審査には、この弁法を適用する。

  (一)実体審査段階の特許出願

  (二)実用新案及び意匠の出願

  (三)特許、実用新案及び意匠の出願に関する審判

  (四)特許、実用新案及び意匠に関する無効審判

  国家知識産権局とその他の国又は地域の特許審査機関との間で締結された二国間若しくは地域間、又は多国間若しくは地域間の協定に基づいて優先審査を行う場合には、関連規定に従って処理し、この弁法は適用しない。

  第3条 次に掲げるいずれかの場合に該当する専利出願又は専利審判事件は、優先審査を請求することができる。

  (一)省エネルギー・環境保護、次世代情報技術、バイオ、ハイエンド設備製造、新エネルギー、新素材、新エネルギー車、スマート製造等、国の重点発展産業に係る。

  (二)各省級及び市轄区が設置された地級市級人民政府が重点的に奨励する産業に係る。

  (三)インターネット、ビッグデータ、クラウドコンピューティング等の分野に係り、かつ技術又は製品の更新の速度が速い。

  (四)出願人又は審判の請求人が、実施の準備を完了している若しくは実施を開始している場合、又は他人がその発明創造を実施中であることを証明する証拠を有している。

  (五)同一の主題について、初めて中国において専利出願を行い、その他の国又は地域に対しても出願を行う場合の、当該の中国における初めての出願。

  (六)その他、国の利益又は公共の利益にとって重要な意義を有し、かつ優先審査を必要とする。

  第4条 次に掲げるいずれかの場合に該当する無効審判事件は、優先審査を請求することができる。

  (一)無効審判事件に係る専利に権利侵害紛争が生じ、当事者が地方知識産権局に処理を請求し、人民法院に訴訟を提起し、又は仲裁・調停機関による仲裁・調停を請求している場合。

  (二)無効審判事件に係る専利が国の利益又は公共の利益にとって重要な意義を有する場合。

  第5条 専利出願、専利審判事件について優先審査を請求する場合は、出願人全員又は審判の請求人全員の同意を経なければならない。無効審判事件の優先審査を請求する場合は、無効審判請求人又は専利権者全員の同意を得なければならない。

  事件に係る専利侵害紛争を処理、審理する地方知識産権局、人民法院又は仲裁・調停機関は、無効審判事件について優先審査を請求することができる。

  第6条 専利出願、専利審判事件、無効審判事件に対して優先審査を実施する件数は、国家知識産権局が各専門技術分野における審査能力、前年度の専利付与件数及び当年度の未処理案件の件数等の状況に基づいて確定する。

  第7条 優先審査を請求する専利出願又は専利審判事件は、電子出願方式を用いなければならない。

  第8条 出願人が特許、実用新案、意匠の出願の優先審査を請求する場合は、優先審査請求書、先行技術又は先行意匠に関する情報資料及び関連する証明書を提出しなければならない。この弁法の第3条第(五)号に掲げる状況を除き、優先審査請求書は国務院の関係部門又は省級知識産権局により推薦意見に署名がなされなければならない。

  当事者が専利審判、無効審判事件の優先審査を請求する場合は、優先審査請求書及び関連する証明書を提出しなければならない。実体審査又は方式審査の段階において優先審査を行った専利審判事件を除き、優先審査請求書は国務院の関係部門又は省級知識産権局により推薦意見に署名がなされなければならない。

  地方知識産権局、人民法院、仲裁・調停機関が無効審判事件の優先審査を請求する場合、優先審査請求書を提出し、かつ理由を説明しなければならない。

  第9条 国家知識産権局は、優先審査請求を受理、審査した後、速やかに審査意見を優先審査請求人に通知しなければならない。

  第10条 国家知識産権局は、優先審査を行うことに同意した場合は、同意した日から、次に掲げる期間内に審理を終結しなければならない。

  (一)特許の出願は45日以内に第1回審査意見通知書(拒絶理由通知書)を発行し、かつ1年以内に審理を終結する。

  (二)実用新案及び意匠の出願は2か月以内に審理を終結する。

  (三)専利審判事件は7か月以内に審理を終結する。

  (四)特許及び実用新案の無効審判事件は5か月以内に審理を終結し、意匠登録無効審判事件は4か月以内に審理を終結する。

  第11条 優先審査を行う専利出願について、出願人はできるだけ早急に意見書提出又は補正を行わなければならない。出願人が特許審査意見通知書(拒絶査定通知書)に応答する期間は通知書が発送された日から2か月、出願人が実用新案及び意匠審査意見通知書(拒絶査定通知書)に応答する期間は通知書が発送された日から15日とする。

  第12条 優先審査を行う専利出願について、次に掲げるいずれかの場合に該当する時は、国家知識産権局は優先審査の手続きを停止し、通常の手続きにより処理し、かつ速やかにこれを優先審査請求人に通知することができる。

  (一)優先審査請求が同意を得た後、出願人が専利法実施細則第51条第1、2項に基づいて出願書類の補正を申し出た。

  (二)出願人の応答期間がこの弁法の第11条規定の期間を超えた。

  (三)出願人が虚偽の資料を提出した。

  (四)審査過程において正常でない出願であることが判明した。

  第13条 優先審査を行う専利審判又は無効審判事件について、次に掲げるいずれかの場合に該当する時は、専利復審委員会は優先審査の手続きを停止し、通常の手続きにより処理し、かつ速やかにこれを優先審査請求人に通知することができる。

  (一)審判の請求人が回答を延期した。

  (二)優先審査請求が同意を得た後、無効審判の請求人が証拠及び理由を補充した。

  (三)優先審査請求が同意を得た後、専利権者が削除以外の方式により専利請求の範囲を補正した。

  (四)専利審判又は無効審判の手続きが中止された。

  (五)事件の審理がその他事件の審査の結論に依存する。

  (六)判断が困難な事件であって、専利復審委員会主任の承認を経た。

  第14条 この弁法は国家知識産権局が解釈について責任を負う。

  第15条 この弁法は2017年8月1日から施行する。2012年8月1日に施行した《特許出願優先審査管理弁法》はこの弁法の施行と同時に廃止する。

 
国家知識産権局 最新の公表資料:2017年上半期専利業務の統計データ

 

  2017年7月20日、国家知識産権局は記者会見を開き、2017年上半期の国家知識産権局主要業務の統計データおよび関連する状況について説明を行った。

  2017年上半期、中国における特許の出願件数は合計56万5,000件、前年同期比6.1%の増加となった。特許付与件数は合計20万9,000件、そのうち、国内の特許の付与件数は16万件であった。国内の特許の付与件数のうち、職務発明は14万9,000件で93.1%を占め、その他の発明は1万1,000件で6.9%を占めた。2017年6月末時点で、中国国内(香港・マカオ・台湾地域を除く)の特許保有件数は合計122万7,000件、人口1万人あたりの特許保有件数は8.9件であった。

  2017年上半期に国家知識産権局が受理したPCT国際出願の件数は合計2万1,600件で、前年同期比16.0%の増加となった。そのうち、2万件は国内発の出願で、前年同期比15.3%の増加、1,600件は国外からで、前年同期比 26.0%の増加となった。そのうち、広東省の1万1,900件が最も多く、北京市、江蘇省、上海市、山東省、浙江省がいずれも500件を超え、これら6つの省・市のPCT出願件数で国内総件数の約9割を占めている。

  2017年上半期の審判請求の受理件数は1万5,865件、結審件数は8,504件、無効審判請求の受理件数は2,064件、結審件数は2,007件であった。

  2017年上半期に国家知識産権局が受理した半導体集積回路の回路配置設定登録の申請件数は合計1,205件、登録証発行件数は1,119件であった。

  2017年上半期の全国の専利行政法執行件数は総計1万5,411件で、前年同期比23.3%増となった。そのうち、専利に関する紛争の処理件数は8,837件(専利権侵害紛争処理件数8,666件を含む)で前年同期比26.3%の増加となり、専利詐称事件の調査・処分件数は6,574件で前年同期比19.5%増加となった。

  (出典:国家知識産権局ウェブサイト)

 
商務部:知的財産権関連の輸出額は149億4,000万元で、前年同期比458.4%の増加

 

  8月4日、商務部服貿司(商務部服務貿易・商貿服務司)の責任者は2017年上半期の中国のサービス輸出入状況について談話を発表した。

  2017年上半期の中国のサービスの輸出入は、輸出入総額2兆2,871億4,000万元で前年同期比12.9%増で、2桁成長となった。その中、輸出は6,950億9,000万元で5.6%の増加、輸入は1兆5,920億5,000万元で16.5%の増加となり、8,969億6,000万元の輸入超過となった。

  知的財産権取引に関するサービスの輸出額は149億4,000万元で前年同期比458.4%の増加となり、今年に入ってからの急速な伸びを維持している。

  上半期の中国のサービスの輸出入は8,969億6,000万元の輸入超過となり、前年同期比26.6%増加した。これは主として旅行、運輸、知的財産という3つの分野に集中している。そのうち、旅行は前年同期比1,322億元増の7,666億2,000万元で、輸入超過総額の85.5%を占め、サービス貿易赤字拡大の最大要因となっている。(出典:商務部ウェブサイト)

 
国家知識産権局:19の特許審査ハイウェイ参加国・地域でPPH申請書を共通化

 

  出願人の特許審査ハイウェイ(グローバルPPH)申請の利便性向上に向けて、中国国家知識産権局はグローバルPPH参加庁と連携して「PPH申請書の共通化」プロジェクトを完成させた。当該プロジェクトに基づき、各庁はPPH申請書の共通様式を共同で作成し、これをPPH参加庁の参考・使用に供する。

  2017年6月30日時点で、当該申請書様式はすでに中国、欧州、スウェーデン、フィンランド、オーストリア、イスラエル、ハンガリー、スペイン、ポルトガル、ノルウェー、オーストラリア、米国、ロシア、カナダ、デンマーク、イギリス、韓国、日本、エジプトの合計19の国・地域のPPH参加庁で採用されている。

  現時点で、出願人が上記の参加庁に提出するPPH申請書は、それぞれ言語が異なっているものの、様式および項目はほぼ同一で、出願人のPPH請求提出時の書式記入および資料作成の利便性が図られたものとなっている。(出典:国家知識産権局ウェブサイト)

 
国家版権局など4部門が「剣網2017」行動を始動

 

  先日、国家版権局、国家インターネット情報弁公室、工業・情報化部、公安部は、北京にて合同ブリーフィングを開催し、「剣網2017」行動の正式始動を宣言した。

  今年の剣網行動では報道・出版・映像業界のネットワーク上の著作権の保護、ならびに電子商取引プラットフォームおよびモバイル・インターネット・アプリケーション(APP)分野の著作権制度の整備に焦点を当て、映像・報道作品のインターネット著作権の秩序の規範化を重要課題として、各種ウェブサイト、モバイル端末、「個人メディア」による権利侵害、無断複製された作品の配信行為を厳重に取り締まり、電子商取引プラットフォームやアプリストアの著作権秩序を集中的に整え、インターネット文学、インターネット音楽、クラウドストレージ、インターネット広告・アフィリエイトの著作権ガバナンスの成果を固め、インターネット企業の主体としての責任を強化し、好ましいネットワーク上の著作権秩序を維持する。

  行動は2017年7月に開始し、4か月余りにわたって3つの項目からなる重点整備業務を実施する。

  1つ目は、重点作品の著作権に特化した整備の展開である。映像・報道作品のネットワーク上の著作権の秩序を規範化することを重点に、各種ウェブサイトおよびクラウドストレージでのファイル共有、動画の違法複製の技術、アプリケーション、微博(Weibo)・微信(WeChat)、掲示板(BBS)などのルートを通じて使用許可を得ずに映像作品を配信する著作権侵害行為を厳重に取り締まり、ウェブサイト、移動端末、WeChat公式アカウントなどの個人メディアおよび各種ニュース・情報集約型プラットフォームを通じて報道作品を無断転載する違法配信行為を厳重に取り締まることである。

  2つ目は、アプリ分野の著作権に特化した整備の展開である。使用許可を得ずにニュース、文学、映画・テレビ、アニメ、音楽作品を無断に発行・配信するアプリストアおよびアプリ提供者の著作権侵害行為を厳重に取り締まり、複数サイト集約リンク型アプリ、インターネットTVスティックおよびセットトップボックスに関連するアプリ著作権侵害行為の取締りを強化し、技術的な防護措置を破るアプリ提供者の違法行為を厳重に取り締まる。

  3つ目は、電子商取引プラットフォームの著作権に特化した整備の実施である。大型電子商取引プラットフォームの著作権監視を重点的に強化し、著作権侵害の図書、オーディオビジュアル製品、電子出版物の販売、およびクラウドストレージのアカウント・パスワード、無断複製物へのリンクを使用するオンラインストアを重点的に取り締まり、電子商取引プラットフォームの著作権監視責任と調査協力義務を明確化し、著作権侵害行為を処理する特別ルートを確立、整備する。行動では各地の各関係部門に調査ルートを拡大し、事件の調査・処分を最優先にし、主体の責任を強化し、協力・連携を強めていくことを求めている。

  権利侵害・模倣品摘発活動指導グループ弁公室、国家インターネット情報弁公室インターネット総合協調管理および法執行督査局、工業情報化部情報通信管理局、公安部治安管理局の関係責任者は、2017年の権利侵害・模倣品摘発活動および「剣網2017」行動の段取りについてそれぞれ報告を行った。(出典:新華網)

 
欧州連合知的財産庁:営業秘密は特許よりも歓迎される

 

  7月13日、欧州連合知的財産庁は「営業秘密および特許の保護を通じたイノベーション:EU企業成功の決定要因」と題する報告書を発表した。研究により、大多数のEU加盟国では特許よりも営業秘密のほうが歓迎され、大企業ではなおさらその傾向が高まることが分かった。

  調査によれば、調査対象企業の中52.3%が営業秘密を使用している一方で、特許を使用している企業は31.7%であった。大企業の場合、69.1%が営業秘密を使用し、52.8%が特許を使用している。中小企業では、51.2%が営業秘密、30.4%が特許を使用している。

  当該調査は「共同体イノベーション調査」と題する先行報告書のデータに基づいている。後者は製造業およびサービス業の企業約20万社を対象として調査を行ったものである。

  最重要データとしては、営業秘密はフィンランドで特に歓迎されており、78.1%の企業が営業秘密を使用する一方で、特許を使用する企業は33.2%にとどまっている。またドイツでも74.1%の企業が営業秘密を使用しており、特許の使用は47.8%であった。

  また調査によれば、営業秘密は方法のイノベーションおよびサービスのイノベーションに利用される可能性が高いことが分かった。もし、イノベーションがサービスではなく有形の製品に係る場合には、特許が利用される可能性のほうが高い。

  報告ではまた、「価格競争が激しい市場においては、特許よりも営業秘密を利用する傾向がある。品質競争が激しい市場においては、営業秘密と特許が併用される可能性もある。」と付け加えている。

  同報告によれば、営業秘密は研究が少なく、特許との関係が曲解されがちであるとのことだ。

  調査の重点は、特許か営業秘密かという企業の選好性、および保護戦略の選択に影響する要素に置かれている。従来の分析では往々にして2つを互いに代替可能なものとして捉えていたが、今回の研究ではこの2つの保護対策の相互補完作用が強調されている。

  研究ではまた、営業秘密のフレームワークを更に発展させるため、ガイドラインを方針策定者に向けに提供することも趣旨としている。2016年には、営業秘密に係る制度の統一化を趣旨とする「営業秘密に関する指令」が採択されている。(出典:中国知的財産権保護網)

 
注目判決

 
集佳が代理した商標「善行者 One Step One Changeおよび図」の 拒絶査定不服審判

 

  「善行者」は中国扶貧基金会が2014年に立ち上げたウォーキング募金活動の名称で、国務院貧困者支援開発指導グループ弁公室がその指導に当たり、中国扶貧基金会および昌平区人民政府が主催者、北京交通広播(北京ラジオ局交通チャンネル)が共催者、電影チャンネル(CCTV6)、中央人民広播電台(中央人民ラジオ局)が支援団体となっている。知的財産権方面での保護を強化するため、中国扶貧基金会は2015年11月13日に商標局に対し第36類「慈善基金の募集、受託管理」を指定役務として第18325062号商標「善行者 ONE STEP ONE CHANGEおよび図」の登録出願を行った。しかし、河北省善行使者公益協会が先行登録した第12326011号商標「善行使者」が存在していたため、商標局は「慈善基金の募集」を指定役務とする本件商標の登録を拒絶した。

  中国扶貧基金会は拒絶査定を不服として、商標評審委員会に対し拒絶査定不服審判を請求し、商標「善行者 ONE STEP ONE CHANGEおよび図」と商標「善行使者」は類似しない旨を主張した。商標評審委員会は審理を経て、出願商標と引用商標は含意および全体の外観において一定の差異があり、かつ出願商標は中国扶貧基金会による広範囲に及ぶ宣伝と使用を通じて、実際の使用においてすでに中国扶貧基金会と対応関係が生じており、引用商標とは相互に区別することができ、関連公衆に誤認・混同を生じさせるまでには至らないことが提出された証拠によって証明されたと判断し、審判に係る指定役務における当該出願商標の初期査定公告を最終的に決定した。当該決定はすでに発効し、出願商標は2017年7月7日に登録が許可された。

  本件は、出願商標が拒絶された「慈善基金の募集」と引用商標の指定役務「慈善基金の募集」が同一であり、この点は疑う余地がない。したがって、本件の争点は商標の類似性の有無にある。本件の争点をめぐり、当事務所は中国扶貧基金会の代理人として、出願商標と引用商標の全体的な外観、文字の構成、呼称の発音、含意の各方面において明らかな差異があることを重点的に説明した。全体の外観において、出願商標は「善行者+ONE STEP ONE CHANGE+図形」が一体として組み合わさったものであり、その全体こそが出願商標の顕著な識別標識であり、引用商標である「善行使者」という純粋に漢字からなる標識とは、その全体をもって比較しなければならない。含意においては、出願商標の漢字は「善行者」という3つで構成されている。これは「善行」と「行者」を組み合わせたものであり、「公益徒歩活動」というブランド趣旨を十分に表現している。また、英文「ONE STEP ONE CHANGE」は「一歩一歩が変化をもたらす」ことを表すものであり、出願商標は事実上、中国扶貧基金会が2014年に発起したウォーキング募金活動に由来する。一方、引用商標「善行使者」は河北省精神文明建設委員会弁公室、河北省志願服務指導委員会弁公室が主催者、河北省善行使者公益協会が運営者、河北省志願服務基金会が共催者である公益活動であって、その活動形式は11の省轄市(省または自治区の地級市――訳注)で貧困学生、障碍者、高齢者、孤児に資金援助を行うこと、農村の子どもたちに素敵な「授業」を届けるというテーマで就学援助活動を展開すること、公益小学校(支援により建てられる小学校――訳注)の建設を支援すること、養老院・孤児院を建設すること、「善行使者·革命の地へ」などの活動を手配し実行することである。したがって、出願商標と引用商標の差異は大きく、標章そのものが類似しない。

  また、出願商標が2014年以降の多数の宣伝活動に使用された証拠も併せて提出し、これらの証拠により、「善行者」の活動が社会からの大きな反響を得ており、当該商標と中国扶貧基金会とが一意対応の関係にあることを示した。上記の理由と証拠はいずれも商標評審委員会に認められた。

  典型的意義

  商標審査基準では、「中国語商標が3つ又はそれ以上の漢字で構成され、単に個別の漢字が異なり、全体として含意が無く又は含意に明瞭な差異が無く、関連公衆に商品又は役務の出所について容易に誤認を生じさせるものは、類似商標であると判定する」と規定されており、出願商標は上記の基準に基づいて引用商標と構成が類似すると判定される。しかし、出願商標は知名度が高く、影響力が広範にわたり、かつ多くの政府部門の公益プロジェクトにかかわっており、登録できなければ、社会公益事業に重大な不利の影響を及ぼすことになる。さらに、「善行」は、公益事業にいて常用される語彙であり、多くの公益団体がこれをブランド名称または活動名称として使用し、その顕著性は低く、かつ強い排他性を有しない。したがって、全体から商標の類似性を把握し、関連商標の知名度を総合的に勘案することは、このような類型の事例を解決する上で順守すべき原則となる。出願商標と引用商標は標章自体に大きな差異があり、出願商標は長期の宣伝・使用を通じてすでに大きな影響力を有する状況にある状況下では、出願商標と引用商標の共存が関連公衆に混同・誤認を生じさせることはない。したがって、登録を認めるべきである。

 
 
集佳が代理した「美麗俏佳人」著作権侵害紛争事件の一審判決

 

  2017年6月6日、上海市普陀区人民法院(以下、「普陀区法院」)は、東方風行(北京)伝媒文化有限公司、上海茗詩化粧品有限公司、上海華煜生物科技発展有限公司、施小红および邯鄲市邯山区時尚化粧品経営部の間で発生した著作権侵害および不正競争事件に対する一審判决を下し、著作権侵害および不正競争行為の停止、影響の除去、さらに、原告が被った経済的損失および合理的な支出合計57万元余りの賠償を被告に命じた。

  調査によると、原告東方風行(北京)伝媒文化有限公司は装飾文字「美麗俏佳人」の創作デザインを完成するとともに、番組「美麗俏佳人」の試写フィルムの制作を完成した。当該番組は化粧品、美容テクニックの紹介・推薦を主とし、その中でも装飾文字「美麗俏佳人」が使用されている。2006年の初回放送から現在まで番組「美麗俏佳人」は徐々に関連公衆、特に美容・化粧とファッションを熱愛する女性に受け入れられている。

  被告は、その製造、販売する化粧品の外部包装上に、原告が著作権を有する美術作品と完全に同一の文字「美麗俏佳人」を目立たせて使用するとともに、WeChatのモーメンツ上の宣伝においても「美麗俏佳人」の文字を目立たせて使用し、さらに、「美麗俏佳人ブランド推薦」、「美麗俏佳人コスメテック推薦」の字面、番組「美麗俏佳人」の司会者である李静氏の画像、および番組関連の宣伝内容を大量に使用した。

  原告は被告の行為が著作権侵害および不正競争を構成していると考え、原告の権利・利益を保護するための訴訟を法院に提起した。

  【典型的意義】

  この事件から、ここ数年、知的財産権の侵害行為に対する中国司法機関の処罰が益々強化され、賠償金額が引き上げられていることが見てとれる。一審法院は原告の請求内容を全面的に認めており、まさに、この原告のような知的財産権の所有者に対する保護、および経済的便益ばかりに目がいき、業界倫理を顧みない権利侵害者に対する厳しい姿勢が具現化されている。なお、当該事件は、著作権侵害および不正競争行為の認定に至る考え方においても参照・検討に値する。

 
 
集佳が代理した商標「」の拒絶査定不服審判審決行政訴訟事件——商標使用許諾および権利確認に対する顕著性の影響

 

  曲美家具集団股份有限公司は、2014年2月18日に「食器棚、椅子(席)、コーヒーテーブル、ドレッサー、ソファー、机、洋服カバー(洋服タンス)、ベッド、カウチソファー、マットレス、家具、銀メッキガラス(鏡)、竹細工、漆器細工、粘土彫刻工芸品、木材、蝋、石膏またはプラスチック製の芸術品、木製家具パーティション、家具用非金属付属品、敷き布団(リネンを除く)、枕」、これらの家具およびそのパーツ類を指定商品として、商標局に対し第14034593号商標「」の登録出願を行ったが、商標局は「当該商標は普通活字体形式のアルファベット2文字のみからなるもので、顕著な特徴を欠き、商標として登録することはできない」との理由で、《商標法》第1項第(三)号の規定に基づき商標登録出願の拒絶査定を下した。

  曲美公司は上記拒絶査定に対して不服審判を請求したが、商標評審委員会は拒絶査定を維持した。曲美公司は商標評審委員会の決定を不服として、北京知識産権法院に行政訴訟を提起した。

  曲美公司の主張は次のとおりである。出願商標「」は登録商標の具備すべき顕著な特徴を備えており、《商標法》第10条第1項第(三)号で規定されている状況には該当せず、かつ曲美公司による長期、大量かつ広範にわたる宣伝・使用を経て比較的高い知名度を得ており、顕著性が大幅に高められ、かつ識別しやすくなっており、《商標法》第11条第2項の規定に基づき、法に則った査定を行うべきであるとして、商標評審委員会による審決取消しを判決で命じるよう法院に請求した。請求の根拠となる資料として、曲美公司は店舗写真、家具および家具付属品商品上に使用された商標「」商標の写真、それぞれの曲美家具売場で使用される商標「」の写真、壁面および屋外広告物の写真、および公式ホームページなどの証拠を提出した。

  北京知識産権法院の判断は次のとおりである。出願商標はアルファベット2字「」で構成されており、曲美公司はこれが特殊字体であり、かつデザインを行ったものであると主張するが、これはアルファベットの普通の表現形式と大差が無く、故にそれ自体の顕著性は低い。しかしながら、曲美公司から提出された証拠によれば、商標「」に対応する中文は「曲美」であり、二者は家具売場、壁・屋外広告物および公式ウェブサイトにおいて頻繁に併用して表示されていることが分かり、曲美公司から提出された商標使用の証拠により商標「」が広範に宣伝、使用されていることが証明可能である。さらに、アルファベット「QM」の組み合わせからなる標識と「曲美」の文字は併せて馳名商標(著名商標)と認められ、その客観性においてすでに一定の商品出所の識別の作用が生じている。したがって、出願商標「」は使用を通じてすでに曲美公司とその文字商標「曲美」と一意対応の関係が生じており、曲美公司商品の重要な識別標識となり、関連消费者に認知されるところとなっており、すでに商標の顕著性と識別機能を備えている。最終的に、商標「」は《商標法》第11条第2項に掲げる状況を構成していると認められ、審決を取り消す。当該判决はすでに発効した。

  【典型的意義】

  本件は《商標法》第11条第2項「使用による顕著性」の規定を併せて適用して商標における顕著性の不備を解消し、商標権が付与された事例であり、行政手続き、司法訴訟の一審手続きを経て、最終的に商標権の取得に至った。

  最高人民法院の「商標権付与・権利確認行政事件の審理の若干問題に関する意見」第5条「係争商標指定商品に対する関連公衆の通常の認識に基づき、商標の顕著な特徴の有無について全体から審査・判断を行わなければならない」、および第6条「中国国内における関連公衆の通常の認識に基づき、外国語で構成された係争商標の顕著な特徴の有無を審査判断しなければならない」との規定に基づき、北京知識産権法院は出願商標「」そのものの顕著性と使用の証拠を勘案して、当該標章における顕著な特徴の有無が総合的に判断されている。つまり、商標において標章そのものの顕著性は、その商標登録の適法性を検討する際の一要素に過ぎず、権利者による当該標章の使用状況も1つの重要な検討要素である。したがって、「顕著な特徴の欠如」により拒絶査定を受けた商標については、十分な証拠を提出して、商標の使用により取得した顕著性を証明することは、権利者にとって権利救済の方策となり得る。

 
集佳の最新動向

 
「法に精通し、期待に応える」 ——「東方眼鏡」(滬上の中華老字号)法定代表者 李定法氏より表彰旗

  7月19日、「東方眼鏡」(滬上(上海の別称)の老字号)の権利保護を成功させた努力への感謝として、上海東方眼鏡有限公司の法定代表者である李定法氏より集佳弁護士事務所へ直々に表彰旗が贈られた。

 

  ▲当事件をメインで担当した張亜洲弁護士が集佳を代表し、表彰旗を受け取った

  歴史的事情や体制転換の影響により、中国の老舗企業は発展の途上で多くの新たな状況、新たな問題に遭遇してきた。とりわけ老舗企業は長期にわたって十分に重視・支援されてこなかったため、適正な発展計画を欠き、知的財産権保護の面における問題が顕著に立ち現われてきた。

  上海東方眼鏡有限公司は、「東方眼鏡」という滬上の老舗を守るため、長い道のりをたどった末、法に基づく権利保護手続きに着手するよう集佳弁護士事務所に全面的に依頼することを決定した。12年の時を経て、2016年末、最高人民法院において、法廷での防衛戦はついに全面勝利を収めるに至った。

 
愛のある企業へ向かおう、公益のチカラを伝えよう ——大連理工大学夏季社会実習班が集佳を再訪

  8月3日、大連理工大学夏季社会実習班の教員・学生が集佳を訪れ、年に一度の愛心(思いやり)の旅に就いた。今回は、大連理工知識産権学院の学生も同行している。集佳の高巍先生、蘇琳琳氏、そして王荷舒弁護士が学生と歓談した。

  2015年に集佳が大連理工大学において集佳奨学金を設立して以来、数十名の優秀な学生が努力の結果として奨励金と海外交流資金を獲得し、引き続き海外で研鑽を積むという夢を実現してきた。そして、愛心奨学金を獲得した学生は、毎年、実践を通じて愛のチカラを伝えようと、夏季社会実習で集佳を訪れてくる。

  集佳の高巍先生は、訪れた先生方と学生を歓迎し、集佳に対する理解を深めてもらおうと、集佳の全体的な概況と人材理念について詳しい説明を行った。学生からの要望に応え、同校の卒業生で集佳事務所新任パートナーの蘇琳琳が来客との意見交換を行い、自身の学生時代から職業人生に至るまでの心境を語った。今回は大連理工知識産権学院の学生も初めて同行し、集佳では特に王荷舒弁護士が講師となって、集佳で代理人として取り扱った典型事例について解説し、執務の過程で得られた感想や経験を語った。

  長年にわたり一貫して集佳は中国で最も優秀な知的財産人材を育成することを自身の責務とし、壮大な発展を遂げる中で、多くのスペシャリストを育成してきた。例年、集佳では優秀な弁理士・弁護士を米国など海外の高等教育機関に派遣し、専門を掘り下げて研究し、研鑽を積む機会を提供している。ここ数年は、清華大学、同済大学、浙江工業大学といった有名校との提携を次々と進め、人材育成の新たな枠組みを共同で模索している。また、専門教育機関との間で「集佳クラス」開設の連携協定を締結し、知的財産人材養成の新たなモデルを開拓している。集佳が愛心奨学金を高等教育機関に展開しているのは、より多くの学生と専門家が知的財産権を理解し、興味を持ち、知的財産業界に携わり、知的財産強国の建設という事業のために各自の能力を発揮し、貢献して欲しいと願うからでもある。