2017年10月26日午後、北京知識産権法院は(2017)京73行初1370号二次元コード専利無効審判行政訴訟事件について開廷審理を公開した。集佳律師事務所はテンセント(騰訊)を代理し、第三者として、銀河聯動が専利復審委員会に訴えた専利無効行政訴訟に臨んだ。審理は2時間以上にわたり、原告、被告、第三者は法廷および技術調査官の主宰、指導の下で、各自の観点を十分に叙述した。集佳律師事務所の孔繁文弁護士、劉磊弁護士がこの事件の審理に出席した。
銀河聯動信息技術(北京)有限公司(以下、「銀河聯動」)は、2006年4月29日、国家知識産権局に「二次元コードと標識を合成するシステムおよび方法」という特許出願を提出し、2010年9月15日に専利番号ZL 2006 1 0078994.4(以下、「係争特許」)の権利が付与された。簡単に言うと、当該特許が保護するのは、二次元コード自体の誤り訂正機能を利用し、二次元コードとロゴ標識を重ね合わせ、商業宣伝の効果を狙うもので、下図の二次元コードとゴールデンアーチに類似するものである。
銀河聯動はここ数年、いわゆる合成二次元コードを使用した業者に対し、相次いで警告状を発送し、合成二次元コードの使用は特許権を侵害する行為であると主張し、特許使用許諾料を請求し、さらに一部の業者を法院に提訴した。そのうち、蒙娜麗莎集団股分有限公司(以下、「蒙娜麗莎社」)は警告状を送付された数多くの企業のうちの1社である。
蒙娜麗莎社は、権利侵害行為は存在しないと考えたため、催告の結果が出せなかったことを踏まえ、2016年4月27日に銀河聯動を広州知識産権法院に訴え、原告の行為が係争特許権を侵害していないことを確認するよう求めた。テンセントはこの事件において第三者として参加して初めて、銀河聯動の前述の係争特許および権利を主張する行為を知り得た。
テンセントは、分析を経て、係争特許はすでに従来技術により公開され、新規性、進歩性を具備しないと考え、2016年7月14日、専利復審委員会に保護客体、新規性、進歩性などによる無効理由を含めた係争特許権の全部無効を申し立てた。
口頭審理を経て、専利復審委員会は2016年11月28日、第30662号の無効審決を下し、係争特許の請求項1-6は引用文献3(US 20090255992 A1)と当業者の技術常識との組合せに対し、進歩性を具備せず、専利法第22条第3項の規定に適合しないと認定した。銀河聯動は、前述の無効の決定を不服とし、専利復審委員会を提訴した。テンセントは第三者として参加し、この事件が生じた。
これとともに、銀河聯動の中国本土での係争特許は全部無効の審決が下されたが、銀河聯動は戦場を香港に移し、自身が香港で出願した同一の係争特許を使用してテンセントを香港高等法院に訴えた。また、メディアの報道によると、銀河聯動はこのほど、香港でプレスカンファレンスを開き、各大手メディアの取材を受け、テンセント、アリババを相手取った専利権侵害訴訟を声高く発表した。すなわち、自身が有する専利番号ZL200610168072.2の「複数フィールド二次元コードを収集、分析するシステムおよび方法」の特許権を侵害したとしてテンセント財付通とアリババ(阿里巴巴)傘下のアリペイ(支付宝)を提訴したと発表した。まさに前述の多くの訴訟手続の存在により、この事件の注目度は空前の高まりを呈した。
係争特許の請求項1が保護するのは、合成二次元コードの生成に用いるシステムであり、次の内容を含む。
合成装置:オリジナル二次元コードと視覚で読み取り可能な標識の合成により前記合成二次元コードを形成するために用いるものである。前記視覚で読み取り可能な標識の少なくとも一部分が前記オリジナル二次元コードと重なり合う。
識別装置:前記合成二次元コードの読み取りと識別に用いるものである。
および調整装置:前記調整装置は、前記視覚で読み取り可能な標識の寸法および/または前記視覚で読み取り可能な標識と前記オリジナル二次元コードとの位置関係を、前記識別装置によって識別される前記合成二次元コードが有するビット誤り率がオリジナル二次元コードの誤り訂正率を下回るまで調整するものである。
一方、引用文献3の請求項4が保護するのは、バーコード符号および別の画像を含む合成画像を提供する方法であり、前記バーコード符号と前記別の画像の相対寸法とポジションを選択することで、前記バーコード符号は前記光学式スキャナにより機械による読み取りができ、かつ前記別の画像は人による視覚的識別を行うことができる。
双方の争点は主に下記に集中した。
1.引用文献3の技術分野は二次元コードを含むか否か。
2.引用文献3の請求項1、4において、明細書0039段および添付図面2bが二次元コードの誤り訂正の特性を除く全部の技術的特徴を公開できるか否か、とりわけ、請求項4は単独の技術方案であるか否か。
3.二次元コード自体が具備する誤り訂正機能。
4.引用文献3の方案について、二次元コードを使用するとき、読取機器が正しく読み取れるか否か。
5.係争特許は、技術的偏見を克服したか否か、係争特許により商業上の莫大な成功を収めたか否か。
法廷での審理を経て、前述の争点がいずれも明らかにされた。
実際に、係争特許は二次元コード自体に備わる誤り訂正の特性を利用し、公知の二次元コードとロゴ標識を重ね合わせたものに過ぎず、いかなる技術的手段を用いた技術的課題の解決もなされていない。商業上のアイデアに過ぎず、中国の専利法における保護客体に属さない。係争特許の米国の特許ファミリー出願も同様に、この事件のD3を引用文献としてその新規性が否定された(35 U.S.C.§102(e))。また、この事件の訴訟上の決定においても、係争特許はD3と当業者の技術常識との組合せに対し、進歩性を具備しないと認めた。D3と当業者の技術常識との組合せに対し、合成、読取、調整などの全部の特許の特徴を含め、専利権者は創造的な労働を行っておらず、いかなる技術的進歩も存在せず、新規性、進歩性を具備しないことが分かる。したがって、係争特許は断じて専利権の付与という独占的保護がなされるべきではない。
最後に、二次元コードが成功し、さらには今日の商業社会で最も主要なトラフィック発生元になり得たのは、二次元コード自体がリード・ソロモン符号の誤り訂正アルゴリズムを取り入れたことで、広範囲に拡張するための基盤を築いたという功績によるものである。また、国から大きな関心を受けたこと、テンセント、アリババなどのインターネットテクノロジー企業による弛まぬ努力の賜物である。しかしながら、これは係争特許とは無関係である。
この事件の最終結果については、後日判決が下される。私たちも結果に注目したい。この事件に関する詳細は、筆者の「銀河聯動二次元コード専利事件分析」、「大国戦略――二次元コード技術の現状と展望」を参照されたい。
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