2009年3月30日に、最高人民法院は「国家知的財産権戦略の徹底的実施における若干問題に関する意見」(以下は「意見」と略称)を公布した。「意見」は6つの部分に分けられ、全36条となっている。「意見」において、特許案件、商標案件、著作権案件、営業秘密案件、植物新品種案件、特定領域における知的財産権案件、不正競争案件、独占案件、知的財産権契約案件、知的財産権訴訟前の臨時措置案件、知的財産権の権利付与及び権利確定案件、知的財産権行政案件、知的財産権刑事案件、知的財産権審判監督案件、知的財産権執行案件、知的財産権渉外案件など16種類の知的財産権案件の審判実務における重要な問題や難かしい問題につき、一連の指導的な意見が示されている。以下は「意見」に記載されている要点の抜粋である。
1.損害賠償の権利侵害の制裁や権利の救済における機能を大いに発揮させ、全面賠償の原則を堅持しながら、法に従い賠償の程度を高め、悪意による侵害、重複侵害、大規模な侵害など深刻な侵害行為の賠償責任を強化し、権利者が十分な損害賠償を獲得·確保できるように努力し、当事者の合法権益の実現を適切に保障する。
2.先行取得権、先用権、先行技術、禁反言、合理使用などの反論理由を法に従い審査かつ支持し、独占行為を禁止し、権利不侵害確認訴訟及び濫訴の逆損害賠償訴訟を法に従い受理かつ審査し、知的財産権及び訴訟手続きの濫用により競争相手に打撃を与える行為、競争を排除かつ制限する行為、革新を阻害する行為を規制し、社会公衆の合法権益を保護する。
3.商標の顕著性の程度、知名度の高さにより、保護の度合い及び保護範囲を確定し、著名商標の区分を超えた保護範囲を合理的かつ適切に確定しなければならない。
4.企業名称(商号)、トレードドレス、ドメイン名など新しい種類の知的財産権案件を積極的に受理する。
5.登録商標、企業名称などの先行取得権と衝突する民事紛争を法に従い積極的に受理し、誠実信用の原則、公平競争の原則、先行取得権の保護の原則などにより適切に裁決する。
6. 公認の商業基準及び社会通念により、不正競争法の原則規定に違反すると認定される場合のみ、不正競争行為と認定することができる。不正競争行為の範囲を不当に拡大することにより自由で公平な競争の妨害を防止する。
7.商標権や著作権侵害案件の場合、特に模倣や海賊版などの明白な侵害や故意による侵害の案件に対し、訴訟前の差止措置を積極的に採用するよう注意する。特許案件の場合、特に発明及び実用新案の案件において、訴訟前の差止措置の採用を慎重に決めるべきである。
8.事実認定や法律適用の上で、特許や商標などの知的財産権に関する権利付与及び権利確定の行政行為に対し、全面的な合法性の審査を行い、行政管理機関による専門技術の事実判定結果を適切に尊重するとともに、権利付与に関する実質的な内容に対して独立した審査判断を行い、法に従い司法再審の基本的な職責を確実かつ全面的に履行する。
9.被執行人が権利侵害停止の発効した判決を履行せず、権利侵害行為を継続する場合、権利者を支持し法によりその民事責任を追求するのみならず、積極的に公安や検察機関と協力し判決不履行という罪で被執行人の刑事責任を追及する。
10.特許や商標などの知的財産権の付与及び権利確定に関する案件の審理業務の分担をできるだけ早く統一し、特許の無効審判及び商標評審機構の準司法機構への転換という課題を研究し、関連する法律規定の改正を積極的に推進する。
11.司法鑑定、専門家証人、技術調査などの訴訟制度を構築完備し、法院が特許などの技術性案件の審判において、技術調査の展開に関する有効な方式及び具体的な方法を積極的に探求することを奨励する。
12.特許、植物新品種及び集積回路設計案件の指定管轄制度を引き続き堅持し、特許案件管轄権が追加された中級人民法院の数を厳しくコントロールし、独占案件や著名商標認定などの特殊な知的財産権案件の裁判管轄権を適度に集中し、著作権、商標、不正競争及び知的財産権契約などの一般的な知的財産権案件を受理する下級法院を適切に増やし、法に従い上級人民法院の指定により、一般的な知的財産権案件の管轄権を有する下級法院が地域を超えて同一上級人民法院の管轄区内の一般的な知的財産権案件を管轄することができる。
|