2009年6月18日、最高人民法院は『特許権侵害紛争案件審理における法律適用の若干問題についての解釈』を対外的に公布し、6月18日から7月10日まで、意見の公開募集を行った。当解釈の発表は、特許権侵害紛争の審理における空白を埋めるものとして大きな期待が寄せられた。同解釈の公布はちょうど『国家知的財産権戦略要綱』の施行1周年にあたることと、『専利法』第3次改正案が来る10月1日に正式に施行される見込みであることから、一部の関係者からは「画期的な司法解釈だ」と見られている。また、多くの問題や困難にぶつかることになるであろう、と予測する見方まで出ている。
6月30日、集佳の副所長である李徳山博士が、人民ネットの知的財産権チャンネル及び「中国知的財産権」誌の招きに応じて「人民ネットIPサロン」に参加した際、今回の『解釈』における「請求項の保護範囲」などの問題について、自身の観点を述べた。
李徳山博士:『解釈』が 「請求項の保護範囲」に関する問題を解決
今回最高人民法院が公布した『解釈意見募集稿』の第1条から第8条までは、いずれも詳細な規定により「請求項の保護範囲」という非常に重要な問題を解決しようとしている。
弁護士として、今回の『解釈意見募集稿』で「請求項の保護範囲」という問題がこのように重視されていることを嬉しく思う。わが国の新『専利法』第59条では、「請求項の保護範囲」に関して、非常に原則的な規定がなされている。その内容は、発明と実用新案技術特許権の保護範囲は、その請求項の内容を基準とし、明細書や図面は請求項の内容解釈に用いることができる、というものである。2001年の司法解釈の第17条では、請求項の保護範囲は、均等の技術的特徴がカバーする範囲にまで拡大されたが、この二条しかなく、非常に少ない。我々は弁護士としての立場から、特許権侵害案件が予測できるものであることを望んでいる。それが予測できるものであるためには、裁判官が請求項解釈における根拠となるような、非常に系統立った明確な規定がなければならない。今回の『解釈意見募集稿』は、この面で比較的よくできていると言える。
李徳山博士:第2条の「应当(しなければならない)」を評価
第2条の意味するところは、請求項を解釈する際、当業者が明細書や図面を見て理解できる請求項の内容によって保護範囲を明確にしなければならないということである。ここで使われている「しなければならない」と、『専利法』での「可以(することができる)」とは別物であり、この規定は現実的な意味を持ったものだと言える。私は、司法解釈第2条の「しなければならない」が正確な観点であるべきだと考える。いかなる状況下においても、請求項の保護範囲を解釈する際には、明細書と図面を参考にすべきである。なぜなら特許とは技術に関連するものであり、技術とは相当複雑なものであるが、言葉での表現力には限界があるからである。
李徳山博士:解釈の第3条と第2条にはやや矛盾あり
同条では、仮に請求項にある用語が不明確である場合、まずは明細書、図面、特許請求の範囲、包袋資料を参照し、それでも不明確な場合には、当業者が理解できる通常の意味で解釈すると規定している。つまり、当業者が理解できる通常の意味と、明細書を読んで理解できる意味とが一致しない場合は、明細書に書かれている意味を基準とするということである。しかし第2条では、当業者が理解できる請求項の内容と請求項の意味が異なる場合には、当業者が理解できる内容を基準とするとしており、両者は矛盾している。第3条の規定が正確であろう。
注釈:
第2条 人民法院は、当業者が明細書及び図面等を読んで理解する請求項の内容により発明または実用新案特許の保護範囲を確定しなければならない。当業者が理解する請求項の内容と請求項の用語の含意が異なる場合、当業者の理解する請求項の内容により特許権の保護範囲を確定する。
特許権の保護範囲は特許の発明の目的と符合しなければならず、特許が克服しようとする従来技術の欠陥または技術方案の不足を含めてはならない。
第3条 人民法院は、明細書及び図面、特許請求の範囲の中のその他の請求項、請求項を解釈した包袋資料の関連内容を運用することができ、明細書に請求項の用語に対する特別な定義がある場合、当該特別な定義を請求項の用語の含意とする。上述の方法を運用してもなお請求項の用語の含意を確定できない場合、参考書、教科書等の公知の文書と当業者が理解する通常の含意を組み合わせて解釈することができる。
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